紀南抄4月8日付

2019-4-8

 スマートフォンの呼び出し音が鳴り響き、「桜が咲いたからおいでよ」と言う声の主は、新宮市熊野川町相須の平岩明さん(81)だった。慌てて飛び出し、平岩さん宅を訪ねた。温かく迎えてくださり、「あんた運がええわ」と指差す方向を見ると、なんと蜂の大群が巣箱に群がっていた。いつ蜂に刺されるかと冷や冷やしながらの撮影に汗が噴き出した。次いで、紀伊半島大水害にも流されずに耐えた「一本桜」の説明を受ける。周囲の勧めもあり、「平岩桜」と命名。見上げる平岩さんと桜が対話しているように見えた。お互いに大水害を乗り越え、人々の心を癒やす。幾星霜を経て今日に至る、一幅の絵画のような友情が、そこにはあった。
 一本桜で思い出してしまうことがある。何度かボランティアで足を運び目にした、岩手県陸前高田市の「一本松」である。どちらも津波と水害を乗り越え、凛として立つその姿には、尊敬の念を禁じ得ない。宮城県石巻市の「ど根性ひまわり」とも思いが重なる。彼らが伝えたいことは何なのだろうか?と思索を巡らしている。

【茂】

社説

新聞広告ガイド

名刺印刷承り中

ページ上部へ戻る