紀南抄2月9日付

2017-2-8

 夏に見られる幻想的な光…蛍の発する光が昔から好きだった。幼いころ、父に連れられ、自宅から離れた田んぼの蛍の群れをよく見に行ったものだ。
 先日、伝統あるお燈祭りが行われた。多くの参加者が白装束に身を包み、松明を持って急な石段を威勢良く駆け下りる勇猛な神事だ。私は山門近くの撮影を担当。途中、小雨が降り、寒さの中、ひたすら大松明の出番を待った。
 周囲には映像を撮影する報道陣が。私のとなりには、有名な英国のBBCがカメラを回していた。小さな島国の行事が海外でも注目されていることに驚く一方、少し誇らしくもなった。
 次々と松明に火がともり、無数に輝く灯火となった。その瞬間、昔見た蛍を思い出した。もちろん、全く別物なのだが。私がいる現場では、松明の火と同様に燃え盛るような上り子の雰囲気、独特な活気があった。炎で周囲は明るくなり、その光景は筆舌にし難い。掛け声や飛び交う怒声、争いに撮影しているだけの私の体温も上昇していく気がした。
 最後の上り子が山を下りたあと、嘘のように周辺が静かになり、一気に寒さを感じ出した。同僚と祭りを振り返りながら会社に戻り、帰宅。床に就くも、妙に落ち着かず眠れない。目に焼きついた「赤い蛍」の激しい光が、祭り参加への衝動をかき立てていた。

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