紀南抄2月10日付

2018-2-9

 「頼むでぇ」の一声とともに木と木がぶつかる快音が響く。毎年2月6日の新宮市内で見られる光景。国指定重要無形文化財で神倉神社の例大祭「お燈祭り」が斎行される日である。
 夕刻前には白装束に身を包み、願いなどを書いた松明(たいまつ)を片手に歩く上り子たちの姿が町中で確認できる。
 一行は市内の阿須賀神社、熊野速玉大社、妙心寺を参拝した後に神倉山へ。歴史ある石段を一歩ずつ踏みしめながら山頂を目指し、親子連れや友人・同僚同士など多くの人々が集まる。
 昨年、私は取材のため、神門付近でカメラを構えていた。暗闇に覆われていた周囲を大松明が照らし、歓声が挙がる。上り子たちの松明にも火が灯され、無数の炎による原始的な明かりが山頂を包み、報道陣やカメラマンはその瞬間を収めようと夢中でシャッターを切る。今年、私は明かりの一部になることができた。「見る」と「する」では大きく違い、言葉には表現できない感動がそこにはあった。
 当日まで同大社や神倉奉賛会、神倉青年団などの関係者が協力し、さまざまな準備や取り組みを懸命に行ってきた。多くの支えが一つとなって営まれる神事に参加できたことを誇りに思い、燃え残った松明の一部を今日も見つめている。

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