東日本教訓に「事前復興」を

 未曾有の被害を出した東日本大震災から8年が経過したが、被災地の復旧・復興には差が出ている。巨額の予算を投入してかさ上げ事業を進める岩手県陸前高田市では、造成した高台の土地に空き地が目立つという。震災後、まちを一時的に離れた人たちが戻ってこない。避難先での新たな生活が根付いているからだ。「復興は5年以内が勝負」(陸前高田市長)というように、少し時間がかかり過ぎたため、計画通りにはいかなかった。
 南海トラフ震源の巨大地震が予想されるなか、当地方の各自治体では防災・減災対策に力を入れているが、東日本大震災からの教訓として、被災後の復旧・復興を視野に入れた取り組み、いわゆる「事前復興」を考えていく必要がある。
 事前復興とは、被災後の復興事業の困難さを考え、事前に復興まちづくりを実現し、災害に強いまちにしておくこと。例えば、津波による浸水被害が想定される地域で集落や地域の継続に不可欠な公的重要施設を事前に高台に移転したり、仮設住宅を建設するための用地を確保したり。また、被災後には一番困難を極める地権者の確認や、復興方針を住民と議論しておくことなども挙げられる。
 事前復興の前段階として、被災後に進める復興対策の手順や進め方を記した計画・マニュアルの作成など「復興事前準備」があるが、その実施状況について、国土交通省が平成28年度に全国の自治体に調査したところ、「十分できている」、「ある程度はできている」と回答のあった自治体は5・0%にとどまっている。一方で、認識については「非常に重要」、「重要である」を合わせると57・1%の自治体はその重要性を認めている。
 新宮市は新年度予算で、一般家庭などを対象にブロック塀などの撤去や改修にかかる費用の一部補助を盛り込んでいる。地震発生時にブロック塀などが倒壊することによって危惧される人的被害や道路の寸断を防ぐためのもので、事前の取り組みと言える。
 南海トラフ地震の被害は九州、四国、近畿、東海と広範囲にわたるだけに、復旧・復興への支援が分散されることが想定できる。市民の命とその後の生活を守るため、できる対策を少しでも前に進めておくことが大切だ。
(平成31年3月16日付 紀南新聞掲載)
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