クジラ追った「勢子舟」
太地の橋本さん 模型制作開始
熊野灘捕鯨文化継承協議会

6・作業を進める橋本さん 太地町の文化財に指定されている、古式捕鯨でクジラを追った「勢子舟(せこぶね)」の模型作りが今月からスタート。太地町太地にある橋本工務店の工房では、代表の橋本達弘さん(72)が完成に向けて汗を流している。「伝統ある舟の制作に関われて光栄」と喜びを噛(か)みしめながら、日々、作業に没頭している。
 文化庁が主催する「日本遺産」に平成28年4月に認定された「鯨とともに生きる」の事業運営母体となる「熊野灘捕鯨文化継承協議会」の本年度事業で、クジラの町に古くから伝わる歴史を広く知ってもらうとともに、大勢に古式捕鯨の様子を感じてもらおうと意図がある。今回は海上での責任者である沖合(おきあい)と呼ばれた筆頭羽差(ひっとうはざし)が乗っていた、長さ約12メートルの「一番勢子舟」を参考に、これの4分の1(長さ約3メートル、幅約55センチ)の模型を作る。来年3月までに完成させ、道の駅「たいじ」に配置するという。
 勢子舟は、昔、捕鯨に使われていた舟だが、大背美流れ(おおせみながれ)と呼ばれる激しい嵐によってそのほとんどが沈んでしまい、今は海岸に流れ着いた舟の破片の一部を同町が保管している状況。昨年度、町立くじらの博物館に展示している舟の部材などをもとに、同町の大工である橋本さんが設計図を作成した。
 舟の材料となるトガ、ヒノキ、カシ、マツ、スギがそろい、今月初めから模型作りが始まった。現在、基礎となる骨組みを組み立てているところで、続いて、底や側面を作っていく。設計図のような出来栄えになるのが9月下旬ごろ。橋本さんは舟特有の反り(曲線)を作るのが難しいとし、「大勢の方に見てもらうものだから、しっかりといいものができるように頑張らないと」と話した。
 その後、舟は同町在住の日本画家、土長けいさんに預けられ、紀州東照宮本殿の障壁画や欄間彫刻に表現された絵を参考にした「鳳凰」などがあしらわれる予定。舟に直接描くのではなく、実物大の下図を準備し、それを船体にトレース(敷き写し)する。塗料は日本画専用の顔料を使うという。
 土長さんは、絵が主役になりすぎないことに注意して作業に臨みたいとし、「実用的な舟であったことが分かるように、なおかつ一つのアートであることも分かるように気を付けたい。100人いれば100通りの絵になるので、自分なりの鳳凰を描きたい。大変そうだけど、とてもやりがいがある」と語った。

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