熊野の魅力 大いに語る
新宮で地中海学会大会

photo[5] 地中海沿岸地域の文化を学際的見地から研究する地中海学会と国際熊野学会は9日、「第42回地中海学会大会」を新宮市福祉センターで開催した。一般、地中海学会、熊野学会の会員ら合せて150人が参加。記念講演では「熊野の魅力」と題し、林雅彦明治大学教授が講演。続いて、那智山青岸渡寺の高木亮英副住職や東京大学の森川知子さん(西アジア史)などのパネリストが地中海トーキング「世界の中の熊野」を実施。ディスカッションを行い、多くの参加者らは学びを深めた。
 地中海学会は1977年に設立。美術史、日本建築士、西洋建築史などの専門領域を超え、さまざまな分野で活躍する研究者らが集まる団体で現在約600人の会員が在籍する。年次大会を毎年、開いており、今回は新宮市と共催。両会が研究交流を通じ、熊野に関わるさまざまな研究の成果を知ることで地中海の学際的研究の発展にさらなる寄与することや熊野地方の魅力を発信することが目的。

■「日本が動くとき
    熊野が動く」

 林教授は記念講演で、熊野古道や西国三十三か所の国内外の評価の高さにふれた。熊野と自然については「熊野を語る上では自然を切り離すことはできない」と述べ、山・滝・川・海など自然に対する畏敬、崇拝も魅力の一つと紹介。さらに森や洞窟、岩石、海岸、岬、潮流などの文化的景観も関東に伝えられており、千葉県にも熊野と同様の氏名や地名があると説いた。
 また、人がなぜ熊野を目指すのか、熊野詣(くまのもうで)については▽熊野は日本の原郷であり、こころのふるさと、聖地▽死者・霊者への中間媒体の地▽海彼の「常世」(死者の赴く世界=他界)を信仰する現世の地▽死後の救済▽現世利益▽修験と神仏習合山岳修業(順峰・逆峰)と補陀落渡海等の見解を示した。そして山の熊野である本宮と海の熊野である新宮と那智が一体化し、熊野三山の成立が1083年以前であるとし、政治・経済への影響としては国生み、神武東征、院政期の政変、室町末の荘園減少と「蟻の熊野詣」、明治維新、大逆事件を挙げた。
 林教授は「熊野は古代から近代に至るまで日本の政治や経済に大きな影響を与えてきた。日本が動くとき熊野が動く。熊野が動くとき日本が動く」と締めくくった。

■専門分野の識者
 研究など発表

 地中海トーキングではあらゆる分野の4人が聖地や神、宗教、生や死などのさまざまな観点から世界各地と熊野の共通点や特徴をそれぞれの研究や見識から発表した。高木副住職は熊野修験や山伏について説明し、「熊野信仰とは仏教、神道、密教、陰陽道、修験道などさまざまな宗教が混じり合って形成されており、宗教の原型を留めている」と述べ、「熊野信仰は広域性があり、多面的な面を持ち、さらに非常にオープンであった。女人禁制等もなく、後白河上皇や貴族、武士、一般人が熊野詣に訪れた」と語った。
 続いて、熊野学会の事務局長を務める松本純一さんが観光の視点から熊野の魅力を紹介。松本さんは「最近の熊野古道では日本人が少なく、外国人がほとんど」と述べ、日本の自然にふれたいという外国人の割合が多いことを事例を交えながら、熊野の評価や実施している施策を説明。今後も観光客には熊野の素晴らしさを知ってもらえるように尽力すると力を込めた。
 その後、城西大学の奈良澤由美さんが西洋美術史として宗教文化財や信仰についての学術研究と観光について講演。マグダラのマリアが過ごしたといわれるフランスのサント=ボーム山などが紹介され、東京大学の守川知子さんは美術史の視点からシーア派イスラム社会の聖地巡礼と移葬について説いた。守川さんによると、イスラムではキャラバンを組んで1年間分の費用を準備し巡礼すると述べ、その旅には願いごとや商売、観光も含まれていることから宗教的な意味合いのみだけで行くわけではないと話した。死者の移葬はイマーム(指導者)の墓のまわりに墓が増えていき、町より墓の面積のほうが大きくなっていることから「世界で一番大きな墓地ではないか」と述べ、「指導者の近くになればなるほど墓の価格が高くなる。死と生が隣り合わせで墓が増えることで経済が潤う」と見解を示した。
 最後はパネリストが壇上に上がり、会員たちからの質問に答えた。

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