郷土教育の充実願う

 新宮市立三輪崎小学校の子どもたちが先日、世界遺産熊野本宮館を訪れ世界遺産や熊野古道について学習した。学校の周辺を離れた取り組みという点で注目に値する。
 地域の歴史や自然、文化、偉大な先人について学ぶ郷土教育。平成18年に教育基本法が改正され、目標の一つとして「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」との項目が付け加えられたこともあり、取り組みが発展している。総合的な学習の時間や社会科を利用した取り組みをよく取材する。
 社会科では、子どもに身近な内容から学年が進むにつれ学びの枠組みが大きくなる。自分たちの学校がある地区のこと、市や町・村、県のことなどの学習をへて全国の地理を勉強し、中学校では世界地理を学ぶ。小中学校は地域と関わりが深く地域との触れ合い学習も進められている。半面、特に高校生になると、受験やほかの学習との兼ね合いもあり、地域学習の機会は限られる。
 このような背景のため、自分が住むまちの歴史や文化などに理解があっても、隣町にある地域資源を認識していない状況になっている。たとえば、新宮市の人が「補陀落渡海」について聞いたことがなかったり、新宮以外の人が「浮島の森」を知らなかったりする。それぞれのまちに独自性があるこの地域において「もったいない状況」になっている。
 高校段階で、田辺から三重県紀北町ほどのエリアを対象とした学習機会をつくるのがいいだろう。もしくは中学校段階で学習内容をより広域化させることも考えられる。小学校と同じ場所や出来事について学んでも、数段深い理解につながるはずだ。実現するためには、授業時間の確保、教える内容の準備や地域にいる詳しい人との連携など、市町村の教育委員会だけでなく、県教委の理解、支援が必要だ。
 地域の子どもの多くは、進学や就職で都市部に転出する。地域外に出た人たちは、出身地の魅力を発信する「大使」になる。郷土について学んでもらうことが波及効果を生むことになる。そのような観点からも、郷土教育の充実に期待したい。

(平成29年12月10日付 紀南新聞掲載)

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