「空振り」恐れない事前行動

 台風18号が日本列島を縦断するコースで進んでいる。事前の情報を入手し、状況に応じた避難行動をとることが大切だ。
 紀宝町は一昨年9月、台風等風水害に備えた事前防災行動計画(タイムライン)を全国の自治体で初めて策定した。タイムラインは、アメリカで考えられた手法。台風の影響が最大になることが予測される時間帯を「ゼロアワー」(台風最接近時)と設定し、その数日前から関係機関と連携して対応する計画。分かりやすく言えば、「台風が来る前に、誰が、いつ、何をするのか、あらかじめ決めておこう」というもの。町役場各課のほか、国土交通省、気象台、消防、警察、社会福祉協議会、自治会、自主防災組織などのとるべき行動、確認すべきことが時系列で示されている
 各担当部局が事前に行動時期と内容を知り、住民にも早めの避難を呼び掛けることができるため、被害の軽減が期待できる。昨年8月の台風10号、先月の台風5号の接近時には、タイムラインを発動。関係機関で、現況の共有や今後の取り組むべき内容・体制を確認した。
 町は現在、よりきめ細かな避難行動を考え、地域版タイムラインの策定を進行中。鮒田地区は相野谷川の氾濫で浸水被害に遭う地域。台風の雨・風がピークになる前に住民の避難が完了するよう、台風接近から逆算した時間と、役場職員、自主防災や区の役員、住民の行動を関連付けておく。浅里地区と大里地区で策定済みで、鮒田地区では年内の完成を目指す。
 これらの取り組みは平成23年の紀伊半島大水害の教訓を生かしてのもの。新宮市や那智勝浦町では、避難勧告や指示を出すタイミングは早くなったが、安全に避難できる状況や時間帯であるかといえば必ずしもそうではない。
 紀宝町のように避難の判断基準が分かっているのと、不意に発令されるのでは心と体の準備が違う。一定の成果があり、住民にも浸透しつつあるタイムライン。紀宝町をモデルに近隣の自治体も取り組んではどうか。同時に、人は近所の人の避難を見たり、声をかけられたりすると避難行動を起こしやすい。避難しても災害が発生しない場合もあるが、そうした「空振り」でもよかったと思えるような住民の意識改革も必要になる。
(平成29年9月17日付 紀南新聞掲載)

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